2024年1月1日に発生した能登半島地震から約一か月が経過ししました。
犠牲者は240名、安否不明者は2月1日現在で15名で現在も捜索中になります。
尊い命を落された方々に対して哀悼の意を表しますとともに、被災された全ての方々にお見舞いを申し上げます。
現在は、電気や通信の復旧は進んできたようですが、交通や水道はまだまだ時間を要するようです。
自宅の倒壊やライフラインの断絶から多くの方が避難生活を余儀なくされています。
現在でも被災地では寒さが続き、降雪などに大変な思いをされています。
今後もいつくるかわからない災害、中でも「冬の災害」からどう身を守っていくかを改めて考え直す必要があります。
そこで今回はくぼてんきさんに、ご自身の経験や過去の事例、冬に考えられる災害や備えについてを気象予報士の観点からお話しいただきました。
リスクを知り、正しい判断や早めの備えをして自然災害から身を守っていきましょう。
目次
忘れられない冬の地震
初めて知った地震の恐怖
今から29年前(1995年)の1月17日、午前5時46分のことです。
当時、小学6年生だった私は大阪府東大阪市で震度5弱相当の揺れを経験しました。
兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)が発生、下から突き上げるような衝撃でした。
子ども部屋で寝ていた私は父に起こされ、子ども部屋から避難。揺れが収まった後、子ども部屋に戻ってみると、私が寝ていた所には教科書やランドセルが散らばっていました。避難するのがもう少し遅かったら…。初めて「地震」というものを知った日でした。
冬の自然災害は寒さとのたたかい
私が住んでいた地域では停電は起きませんでしたが、地震発生時には、大阪や兵庫を中心に約260万戸の 大規模停電が起きていました。また、ガスは約85万戸が供給停止になりました。冬の自然災害は、寒さとの闘いです。ほとんどの暖房器具は電気又はガスがエネルギー源になっているので、当然使用ができなくなって体温を保つことが難しくなります。災害そのものからは命が助かっても、その後体調が悪化してしまったり、低温により命を落とす可能性もあるのです。
そのことから、冬の備えがいかに必要で大切なことかがわかります。冬の防災は寒さの対策をまず考えましょう。電気やガスを使用しない暖房器具(石油ストーブ)やカセットガスストーブ、カイロ、アルミブランケットや毛布、厚手の靴下や手袋、寝袋などを備えておきましょう。また、災害時は冷静ではないことから、備蓄品の使い方を事前に学んでおく・通常時から使用するなどしておくといざとなった時にスムーズな行動がとれます。
参考元:関西電力ー阪神淡路大震災-応急送電までの7days
https://www.kepco.co.jp/energy_supply/supply/days/day1.html
寒さは避難を遅らせる原因にもなってしまう
災害が発生した時の天気や気温によっては、避難を躊躇してしまう事があります。
外が暗い時、寒い時、雨が降っている時…どうしても「まぁ大丈夫だろう」と思ってしまいます。冬の夜こそ、一番被害が大きく出てしまう事を覚えておいてください。 雪がほとんど降らない神奈川でも、もしかしたら「その瞬間」、雪が降っているかもしれないのです。取返しがつかなくなる前に、迷いや躊躇があっても避難への決断は迅速に行いましょう。
雪害によって起こりえる事故
冬の災害についてもっとも考えなければならないことは雪害です。
雪害とは、積雪害・雪圧害・着雪害・風雪害・雪崩などのことを指します。
では、雪害が起こるとどのような事故が発生するでしょうか。
ここでは5つのケースに分けて説明していきます。
除雪中の事故
自宅など建物の屋根の雪下ろしや雪かきなどの作業中に発生する事故のことを指します。
これらの事故を防ぐためには複数人で作業をすることを心掛けてください。また、はしごの固定や命綱などできる限りの装備を心掛けると事故防止につながります。
車による雪道での事故
降雪時、降雪後の路面凍結や視界不良による事故を指します。
交差点や橋の上、トンネルの出口などは滑りやすい環境になるので、意識した運転を心掛けましょう。また、立ち往生やアクシデントにより走行不可能な状態に備えて、車の中にも備蓄品・装備品を用意しておきましょう。
歩行者の雪道での事故
雪の少ない地域でも積雪や凍結による転倒は多発しています。 道路の白線上、坂道、車の出入りぐちなどは、滑りやすく事故の原因になります。滑りにくい靴、帽子や手袋の着用などに気を使い、転倒事故を防ぎましょう。
雪のレジャーでの事故
雪のレジャーでの事故は、自身の油断や判断の甘さから発生するケースが多くみられます。特に立ち入り禁止区域にはいると、遭難やケガをする可能性があります。山の天気は変わりやすく、先ほどは晴れていたのに、ホワイトアウトが急に発生する場合もあります。 準備をする、知識を持つ、仲間と過ごすなどして避けられる事故を防ぎましょう。
雪崩による事故
雪崩とは、「斜面上にある雪の氷の全部または一部が肉眼で識別できる速さで流れ落ちる現象」を言います。雪崩は「表層雪崩」と「全層雪崩」の大きく2つのタイプに分かれます。
事前に、気象庁や自治体から発信される情報を確認しておきましょう。また雪崩に巻き込まれた場合は、雪崩の流れの端に逃げる、体から荷物を外す等できる最善策を事前に知っておきましょう。
雪害は、事前の準備や知識を知り、備えることで回避できる場合がたくさんあります。
また、雪が多い地域だけが起こる災害ではないので、雪が降らない地域の方も内容や回避策を知っておきましょう。
関東での雪害事例
関東の平野部では雪が積もることはあまりありません。だからこそ、雪が降ったときは交通網の麻痺や事故の可能性が高いのです。
次に過去に実際に起こった雪害を紹介します。このような事例は備えておきたい知識の一つとして、知っていてください。
平成26年2月の大雪による雪害
今から10年前(2014年)の2月14日から16日、南岸低気圧の影響で近畿から東北にかけて大雪となり、関東も記録的な大雪となりました。
横浜では14日に26センチの降雪があり、翌15日には28センチの積雪に。1986年以来28年ぶりの大雪になりました。バスが運休するなど、交通機関に大きな影響が出ました。
また厚木海軍飛行場では雪の重みに耐えられず陥没した屋根によって、日本飛行機の格納庫で修理中だった6機が破損、約70億円の損害となってしまいました。
センター試験も繰り下げられた
大学入試センター試験というと、雪が降りやすい印象があるかもしれません。
2014年の時もそうでしたが、慶応大学日吉キャンパス(横浜市港北区)では入試開始時間を3時間繰り下げたこともありました。
万全の体調、コンディションで試験を受けられるように、いつも以上に情報収集はこまめに行ってください。予想外の場所で雪の被害にあう可能性も考えておきましょう。
雪への備え、寒さへの備え、しっかりして冬を乗り越えましょう。
暖冬でも雪は降る?
前項では、雪が降る地域でもあまり降らない地域でも備えが必要なことや、過去の雪害の事例を伝えてきました。ここでは、降雪の条件や傾向を暖冬だった年の例を含めて説明していきます。
暖冬でも雪が降らないとは限らない
今冬は暖冬と言えますが、「暖冬=雪が降らない」ということではありません。気温が低い時に降水があると雨ではなく雪が降ってきて、条件が揃えば大雪になることも考えられます。
南岸低気圧
関東地方で雪を降らせるのは「冬型の気圧配置」ではなく「南岸低気圧」の時です。
関東の南の海上を発達した低気圧が西から東に移動すると、関東は北風が吹いて、内陸部の冷たい空気がグッと流れ込んできます。
湿度にもよりますが、上空1500メートルがマイナス6度以下、地上付近の気温が4度以下だと、雨ではなく雪の可能性が高くなります。
暖冬だった年も関東で雪が降った
冬は北から強い寒気が南下してきますが、「暖冬」になるとこの寒気の流れ込みが弱くなります。寒気の流れ込みが弱いと、先ほど説明した「南岸低気圧」が日本に近づきやすくなります。
雨になるか雪になるかは分かりませんが、記録的な暖冬だった2016年も横浜や東京で雪が降って積もりました(沖縄本島でも観測史上初めて雪を観測しました)
くぼてんきさんのお話をきいて
今回はくぼてんきさんに、冬の防災と気象についてのお話しをお伺いしました。
季節を問わず、いつやってくるかもしれない災害は、あらゆるリスクを考え、備蓄品の入れ替えや使用方法を知ることが特に重要になることを説明いたしました。また、冬独特の「雪害」は予測や準備で回避ができることがわかりましたね。自分や家族の命を守るために、「冬の防災」を見直していきましょう。
最後に、この度被災された能登を始め北陸地方の早期復旧、復興を切に願っております。(SONAETERUスタッフ)
くぼてんき
日本テレビ「 ZIP! 」気象キャスター。はまっ子防災プロジェクト公式アンバサダー。気象予報士、防災士、こども環境管理士。東京都認定大道 芸人ヘブンアーティスト。